12月29日、今年を急いで片付けなくていい夜に観たいNetflix作品
🌙 はじめに──12月29日は「人生をまとめなくていい日」
12月29日という日は、いつも少し居心地が悪い。
仕事納めが終わり、
街は年末モードに切り替わり、
テレビもSNSも「一年の総括」を始める。
でも、自分の中はどうだろう。
胸を張って「いい一年だった」と言えるわけでもなく、
かといって「最悪だった」と切り捨てるほど単純でもない。
嬉しかったことも、
後悔も、
まだ言葉にならない感情も、
全部が中途半端なまま残っている。
それなのに世の中は、
「振り返れ」「まとめろ」「来年に向かえ」と急かしてくる。
だから僕は思う。
12月29日は、人生を整理しなくていい日だ。
決着をつけなくていい。
意味づけをしなくていい。
前向きな言葉を探さなくていい。
そんな夜に観る物語は、
背中を押す作品じゃなくていい。
「途中のままで、ここにいていい」
そう言ってくれる作品があれば、それで十分だ。
🎬 本日のおすすめ作品
Our Souls at Night(邦題:夜が明けるまで)
この映画を初めて観たとき、
正直、驚くほど「何も起きない」と感じた。
事件もない。
人生を変える決断もない。
ドラマチックな展開もない。
描かれるのは、
年を重ねた男女が、
夜だけ同じ時間を過ごすという、
とても静かな選択だ。
それだけの映画なのに、
12月29日の夜に観ると、
胸の奥がじわじわと温かくなる。
この映画は、
人生をやり直させない。
でも、
「ここまで生きてきた時間」を
そっと肯定してくれる。
年末にこれほど優しい距離感の作品は、実は少ない。
🕯 この映画は「前向きにならせない」から、年末に効く
多くの年末向け作品は、
どこかで「再出発」や「希望」を用意している。
それ自体は悪くない。
でも、12月29日の夜には、
その明るさが少し眩しすぎることもある。
『Our Souls at Night』は違う。
登場人物たちは、
過去を清算しようとしない。
未来の計画を語らない。
ただ、
今夜をどう越えるかだけを考える。
それは、年末を迎える私たちと、
驚くほど同じ姿勢だ。
今年をどう総括するかより、
今夜をどうやり過ごすか。
その問いに集中することで、
心は少しだけ楽になる。
🎞 ワンシーン深掘り──「何も起きない夜」が、いちばん忘れられない
この映画で、僕が何度も思い出すシーンがある。
二人が同じ部屋で、
特別な会話をするわけでもなく、
ただ夜を過ごしている場面だ。
沈黙が流れ、
気まずさと安心が、
言葉にならないまま同時に存在している。
その空気を観ていると、
「何か意味のあることを話さなきゃ」
「価値ある時間にしなきゃ」
そんな焦りが、少しずつ消えていく。
12月29日の夜は、
私たち自身もまた、
説明できない一年を、説明しないまま終えようとしている。
このシーンは、
その状態を否定しない。
何も語らない時間を、
誰かと共有できる夜は、
思っている以上に少ない。
この映画は、
その希少さを、
とても静かな形で差し出してくる。
🧠 なぜ年末は「孤独」が強まるのか
年末になると、
人は自然と「意味」を求め始める。
今年はどんな一年だったか。
何を得たのか。
来年はどう生きるのか。
でも、人生はそんなに整理整頓されていない。
だから問いだけが増え、
答えが見つからないまま、
心が疲れていく。
『Our Souls at Night』は、
孤独を解消しようとしない。
孤独は悪ではなく、
誰かと夜を越えることで、少しだけ和らぐものとして描く。
12月29日の夜に必要なのは、
完全な解決ではなく、
ほんの少しの「和らぎ」なのだと思う。
⏳ この映画を観た翌朝、起きる小さな変化
この映画の本当の効き目は、
観終わった瞬間ではなく、
翌朝に現れる。
目が覚めたとき、
今年をどう総括するかという焦りが、
少しだけ遠のいている。
「まだ答えを出さなくていい」
そんな感覚が、体に残っている。
それは劇的な変化じゃない。
でも、年末を乗り切るには十分な効能だ。
🕰 観ている最中、時間はどこへ行くのか
この映画を観ているあいだ、
時計を確認する瞬間が、ほとんどなくなる。
物語に引き込まれている、というよりも、
時間そのものが薄まっていく感覚に近い。
場面が切り替わっても、
強い起伏は起きない。
音楽も感情を煽らない。
それなのに、
「まだ続いてほしい」と思っている自分に気づく。
12月29日の夜は、
一年の時間が、すでに少し崩れている。
昨日と今日の境目も、
今年と来年の境目も、
まだはっきりしない。
この映画は、
その曖昧な時間感覚を、無理に整えない。
むしろ、
「時間が曖昧なままでいい」と、
静かに肯定してくる。
年末に感じるこの“時間のゆるみ”は、
だらしなさじゃない。
一年を生き抜いた人にだけ訪れる、
自然な状態だと思っている。
🧠 なぜ「何もしない関係」が、こんなにも沁みるのか
この映画の二人は、
お互いに何かを与え合おうとしない。
励まさない。
救おうとしない。
未来を約束しない。
それなのに、
一緒に夜を過ごすことだけは、
やめない。
この距離感は、
現代の人間関係から見ると、少し異質だ。
私たちはつい、
「役に立つ存在でいなければ」
「何かを提供しなければ」
と考えてしまう。
年末になると、
その思考はさらに強まる。
一年を通して、
自分は何を成し遂げたのか。
誰の役に立てたのか。
でもこの映画は、
その問いを正面から無視する。
役に立たなくても、
意味がなくても、
一緒に夜を越えることはできる。
この思想こそが、
12月29日の夜に、
深く、静かに刺さる理由だ。
何者かにならなくても、
人は人と時間を共有できる。
この映画は、
その当たり前を、
もう一度思い出させてくれる。
❄️ 黒川式:この映画のいちばん効く観方
- 部屋の灯りは、少し落とす
- スマホは視界から外す
- 意味を探そうとしない
この映画は、理解する作品ではない。
同じ夜を一緒に過ごすための映画だ。
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🌒 この夜の感情は、来年に持ち越していい
年末になると、
私たちは無意識のうちに、
感情を片づけようとしてしまう。
今年のうちに、整理しておきたい。
区切りをつけたい。
新しい年は、軽い気持ちで迎えたい。
でも、この映画を観終えたあと、
その欲求が、少しだけ揺らぐ。
「全部、今年のうちに終わらせなくてもいい」
そんな考えが、
静かに浮かんでくる。
物語の中でも、
彼らは何かを解決したわけじゃない。
人生の答えが出たわけでもない。
それでも、
同じ夜を越えただけで、
関係は確かに変わっている。
年末の夜も、同じだ。
今年の疲れが、
完全に取れなくてもいい。
割り切れない気持ちが残っていてもいい。
未回収の感情を、
そのまま来年に連れていく。
それは、怠慢じゃない。
むしろ、誠実な生き方だと思う。
新年は、
何もかも新しくならなくていい。
この夜に感じた温度を、
そのまま持ち越せたら、
それだけで十分だ。
🌙 まとめ──今年を閉じなくても、人は眠れる
12月29日は、人生をまとめる日じゃない。
途中の感情を、
途中のまま抱えて、
夜を終える日だ。
『Our Souls at Night』は、
その「途中」を否定しない。
今年をきれいに片付けなくても、
人はちゃんと眠れる。
今夜は、
何者にもならないまま、
静かに夜を越そう。
── 黒川 煌
📚 情報ソース / References
- Netflix公式作品情報
- Variety(Netflixオリジナル映画レビュー)
- The Hollywood Reporter(晩年の人間ドラマ分析)
※配信状況は地域・時期により変更される場合があります。
本記事は作品内容を尊重しつつ、黒川 煌の視点で再構成しています。



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