1月10日。週の真ん中、まだ重い夜に──それでも日常は続いてしまう

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1月10日。週の真ん中、まだ重い夜に──それでも日常は続いてしまう

🌗 1月10日という、正直すぎる日

1月10日は、少し居心地の悪い日だ。
正月はもう終わった。仕事も始まった。
それなのに、気持ちだけが追いついていない。

1月4日や5日のような「再開の緊張」は薄れ、
1月7日あたりにあった「なんとなく慣れた気がする錯覚」も、もう使えない。
代わりに残るのは、はっきりした疲れではない、
言葉にしづらい重さだ。

前向きな言葉が、今日は少しうるさく感じる。
「通常運転に戻ろう」「そろそろペースを上げよう」
そう言われるたびに、自分の内側とのズレがはっきりしてしまう。

1月10日は、元気になれない自分を誤魔化せない日だ。
だから今日は、気合を入れる話はしない。
重いままでも、一日は終わるという事実だけを、静かに見つめたい。

🕰 日常は、感情を待ってくれない

気分が整ってから動けたらいいのに、と何度も思う。
でも現実は、そんなふうにできていない。

感情が追いついていなくても、朝は来る。
身体が重くても、予定は進む。
やる気がなくても、やらなければならないことは減らない。

1月10日という日は、その現実を突きつけてくる。
「回復してから」「元気になってから」という猶予が、
もう許されなくなってくる頃合いだ。

でもそれは、悪いことばかりじゃない。
感情が整わなくても、
生活は意外と回ってしまうという事実は、
少しだけ肩の力を抜かせてくれる。

完璧じゃなくていい。
前向きじゃなくていい。
今日はただ、日常に置いていかれないことだけで十分だ。

🎬 ある映画が、ふと重なった夜

そんな夜に、ふと思い出したのが、映画『Julie & Julia』だった。
料理映画として知られているけれど、
この作品の本質は、達成や成功にはない。

この映画に描かれているのは、
「今日も台所に立つ」「今日の一日を終わらせる」
その繰り返しだ。

やる気に満ちている日ばかりではない。
むしろ、不安や迷いのほうが多い。
それでも、翌日が来て、また同じ場所に立つ。

1月10日の僕たちと、この映画はよく似ている。
特別な決意も、劇的な変化もない。
ただ、続いてしまう生活の中に身を置いている

だからこの映画は、励ましにならない。
でも、孤独にもさせない。
その距離感が、今夜にはちょうどいい。

🎬 今日、この夜に重なる一本

もし、この重さのまま何かを流すなら。
今日の夜にいちばん近いのは、映画『Julie & Julia』だと思う。

前向きにならなくていい。
元気を取り戻そうとしなくていい。
ただ、生活が続いてしまう感覚に、静かに寄り添ってくれる。

観終わったあとに何かが変わるわけじゃない。
でも、「今日も一日を終えた」という感覚だけは、きっと残る。

1月10日は、それで十分だ。

🎞 作品について──『Julie & Julia』が描く、うまくいかない日々のリアリティ

映画『Julie & Julia』は、表面的には「料理」を軸にした物語だ。
しかしこの作品を観て強く残るのは、レシピや成功談よりも、
日々が思った通りに進まない感覚のほうだと思う。

物語は二つの時間軸を行き来する。
一人は、家庭と仕事のあいだで揺れながら料理本を書き続ける女性。
もう一人は、単調な日常に息苦しさを覚えながら、
「一年間、毎日料理を作る」という個人的な挑戦を始めた女性だ。

けれど、この映画は「挑戦」や「夢」という言葉を、
都合よく輝かせることをしない。
料理をすれば必ず楽しいわけでも、
努力すれば必ず報われるわけでもない。

失敗する日がある。
自分が何をやっているのか分からなくなる夜がある。
誰かと比べて落ち込む瞬間も、
「こんなことを続けて意味があるのか」と疑う時間も、
この映画は丁寧に描いていく。

だから『Julie & Julia』は、成功の物語というより、
生活の中で心が摩耗していく過程を描いた映画だと言ったほうが正確だ。

印象的なのは、登場人物たちが何度も立ち止まり、
それでも完全には投げ出さない点だ。
前向きだから続けているのではない。
自信があるから進んでいるわけでもない。

「やめる理由はたくさんあるけれど、
続ける理由は、意外と説明できない」
そんな状態のまま、日々が積み重なっていく。

この曖昧さこそが、1月10日の夜に、この映画が響く理由だと思う。
気持ちは整っていない。
自分が正しい方向に進んでいるのかも分からない。
それでも、今日という一日は、すでに始まってしまっている。

『Julie & Julia』は、そんな現実を否定しない。
無理に意味づけをしない。
「それでも生活は続く」という事実を、
ただ淡々と、誠実に積み上げていく。

観終えたあと、胸が熱くなる人もいるだろう。
何も変わらなかったと感じる人もいるかもしれない。
でも少なくとも、うまくいかない日々を抱えたままでもいい
そう思える余白だけは、確かに残る。

1月10日という、重さをごまかせない夜に。
この映画は、背中を押さない代わりに、
隣に腰掛けてくれる作品だ。

🍳 「続けているだけ」で、今日は十分

世の中では、続けることは美徳として語られる。
努力、成長、成果。
でも現実の「継続」は、そんなに立派なものじゃない。

惰性に近い日もある。
「やめたい」と思いながら続けている夜もある。
それでも終わってみれば、今日も一日は過ぎている。

『Julie & Julia』が誠実なのは、
この曖昧で、少し情けない継続を、
無理に美化しないところだ。

1月10日に必要なのは、自己肯定ではない。
「これでいい」と言い切ることでもない。
「今日は壊れなかった」という事実を、
そっと受け止めることだと思う。

🌙 まとめ──重い夜のまま、眠ればいい

1月10日は、踏ん張りどころでも、切り替えどきでもない。
ただ、現実の重さを実感する日だ。

元気が出なくてもいい。
前向きになれなくてもいい。
それでも、今日という日は、もう終わろうとしている。

映画も、言葉も、何かを変えてくれる必要はない。
同じ夜を一緒にやり過ごせれば、それでいい

1月10日は、そんな静かな肯定で締めくくりたい。

── 黒川 煌

🔗 あわせて読みたい|1月の夜とNetflixの静かな物語

※いずれも1月〜年始の“無理しない夜”に寄り添うNetflix作品の読み物です。
気力があるときに、気になるものからどうぞ。

📚 補足・免責

※本記事は、Netflix配信作品を題材に、映像批評家・黒川 煌の視点で構成しています。
※作品の配信状況は、地域や時期によって変更・終了する場合があります。
※記事内の感想・解釈は、特定の価値観や行動を推奨するものではありません。

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